身体の使い方

「身体操作」というと、武道やスポーツなど、身体そのものに興味がある人が学ぶもの、という印象があります。実際、身体操作についての情報はたくさんありますが、それを見るのも、もともとそういうことに興味がある人が中心なのではないでしょうか。

しかし、身体操作をもっと広く「身体の使い方」と捉えると、決して一部の人だけの話ではありません。

立つ、座る、歩く、寝る、起き上がる、物を持つ。私たちは日常生活の中で、常に身体を使っています。そして、今の身体には、それまでどのように身体を使ってきたのか、その人なりの「癖」も表れているはずです。

もちろん、痛みや不調にはさまざまな要因が関係します。ただ、その一つとして、日常の身体の使い方が関係している場合もあります。そうであれば、身体そのものを整えるだけではなく、それまで身につけてきた「使い方」を見直す必要があるかもしれません。

これは、スポーツにおける「フォーム」とよく似ています。

スポーツを始めたばかりの頃は、まず基本となるフォームを覚えます。そして、それを何度も反復することで、身体に学習させていきます。

ところが、さらに高いパフォーマンスを求めるようになると、全員がまったく同じフォームである必要はなくなってきます。身体の大きさも、骨格も、筋力も、これまで身につけてきた動きも人それぞれだからです。

そこで重要になるのが、「どんな形で動くか」だけではなく、**「何のために動くのか」**という目的です。

例えば、「できるだけ小さな力で、できるだけ遠くへボールを投げる」という目的があったとします。

その目的に対して、自分の身体をどう使えばよいのか。どのように身体を動かし、どのように力を伝えればよいのか。目的があることで、自分の身体を使いながら、その人なりの解を探していくことができます。

そう考えると、「良い身体の使い方」とは、外から見た一つの正しい形に身体を当てはめることではなく、目的に対して、その人の身体に合った使い方を見つけていくことなのかもしれません。

そして、これはスポーツだけではなく、日常動作にも当てはまるのではないかと思います。

これまで僕自身、身体にとって合理的な使い方とは何かを考えたとき、「骨格に沿って動く」というところまでは考えていました。ただ、それだけでは実際の日常動作を観察するための手がかりとして、まだ少し曖昧でした。

そこで次のとっかかりとして考えたのが、日常の身体の使い方を分類して観察することです。

まず、日常生活における基本的な姿勢を大きく分けると、

臥位・座位・立位

の3つがあります。

そして、その間には姿勢を変える動きがあります。

寝返りをする。寝た状態から起き上がる。座った状態から立ち上がる。立った状態から座る。階段を上り下りする。

これらは、身体と重力との関係を変えながら、身体の位置や重心の高さを変えていく動きとして見ることができます。

一方、立位から場所を移動する代表的な動作が「歩行」です。歩行では、身体を支えながら、主に進行方向へ身体を運んでいきます。

つまり、まずは、

「臥位・座位・立位という3つの姿勢」
「その姿勢を変える動き」
「歩行によって場所を移動する動き」

という大きな分類から日常動作を観察してみる。

そして大切なのは、その動作が「正しい形をしているか」だけを見ることではありません。

寝返りなら、身体の向きを変える。

起き上がりなら、寝た状態から身体を起こす。

立ち上がりなら、座位から立位へ移る。

歩行なら、身体を支えながら目的の場所へ移動する。

それぞれの動作の「目的」に対して、その人がどのように自分の身体を使っているのかを見る。

そこに、その人特有の身体の使い方が表れてくるのではないかと思います。

その使い方と、現在の身体の状態を照らし合わせていく。必要であれば、別の使い方を試してみる。そして、その人の身体にとってより無理のない方法を探していく。

そう考えると「身体操作」は、決して特別な人だけのものではありません。

毎日の立つ、座る、歩く、寝る、起きる。その一つひとつが身体の使い方です。

だからこそ、日常動作の「目的」を明確にし、その人が目的に対してどのように身体を使っているのかを見ることが、その人にとっての「良い身体の使い方」を考える一つの手がかりになるのではないかと思います。

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