第13冊目 記憶する体

著:伊藤亜紗 出版社:春秋社

本の内容

『記憶する体』は、障害を持つ方々へのインタビューを通して、「身体とは何か」「人はどのように身体と共に生きているのか」を考える一冊です。視覚障害、吃音、麻痺、幻肢痛、若年性認知症など、さまざまな身体の経験を持つ方々のエピソードから、身体に刻まれる経験や、その人だけが持つ身体との向き合い方が描かれています。

私たちは普段、何気なく身体を動かしていますが、その一つひとつの動作や感じ方には、その人が生きてきた時間や経験が深く関わっています。本書は、身体を単なる機能として見るのではなく、その人自身の人生が刻まれたものとして捉える視点を与えてくれる本です。

① この本を手に取った理由

最近、再び伊藤亜紗さんの本を手に取り、その内容の濃さや独自の視点、そして身体について深く学べることを改めて実感しました。そこで、まだ読んでいなかった伊藤さんの著書を数冊購入し、その中の一冊として手に取ったのが『記憶する体』です。

② 印象に残ったこと

この本では、12の身体の記憶、11のエピソードを通して、主に障害を持つ方々の身体や生活についてのインタビューが紹介されています。そこには、それぞれの障害によって生じる生活上の困難や痛み、悩みからどのように生活を乗り越えて来たか、普段なかなか知ることのできない身体の経験に触れることで、自分自身の知見が大きく広がりました。

また、最後に著者がまとめている、人が自分の身体に介入できない、無意識に起こり抗うことのできない自然的な部分と、意識的に、そして時には科学の力も借りながら身体を変化させようとする人的な部分についての考え方も印象に残りました。これは、最近自分自身が身体を扱う上で考えている「身体という自然に対して、人はどのように関わっていくのか」というテーマとも重なる部分がありました。

さらに、若年性認知症の方のエピソードから、「記憶」とは単に過去の出来事を覚えていることだけではなく、ドアを開ける、歩くといった普段無意識に行っている身体の動作にも深く関わっていることを知り、身体と記憶のつながりについて改めて考えさせられました。

③ 僕はこう感じた

著者が述べる、生きていく中で一人ひとりが身につけてきた、自分自身の身体だけが持つ「ローカルルール」という考え方が、とても印象に残りました。

これは自分自身にも当てはまりますし、日々向き合っているお客さんにも当てはまることだと思います。

身体に不都合が生じたとしても、そこに至るまでの過程や、その身体との向き合い方に決まった正解はありません。それもまた、その人自身が身体と共に生きてきた経験であり、その人だけの身体の歴史なのだと思います。

身体は生まれた時から現在まで、その人自身の生き方を刻み続けている。そのことを踏まえて身体を見ることの大切さを改めて感じました。

④ 整体や日常とのつながり

この本を読んで改めて感じたのは、今ある痛みや動きだけを見るのではなく、その身体が歩んできたストーリーや、その人だけのルールにも目を向けることの大切さです。

施術では「今」の身体を大切にしながらも、その背景にある身体の歴史にも耳を傾けられるよう、これからも意識していきたいと思いました。

⑤ こんな人におすすめ

身体について違う視点から学びたいセラピストの方にはもちろん、身体に興味がある一般の方や、痛みや不調を抱えている方にも読んでいただきたい一冊です。

身体を見る視点を広げてくれる本だと思います。