第九冊目は、監修・著 高岡英夫、佐々岡潔・斉藤孝 著『身体調整の人間学』です。
施術を「現象」と捉え、それを研究、学術論文形式にまとめた本です。内容的にとても稀有なものだと思います。
単に機械的に施術をするのでは無く、人と人が「身体的」な関係を介して治癒を試みるという行為は、「作業」のような物質的では無い、「人間らしさ」を含んだ特異なものなのだと教えてくれます。
施術者の持っている、見ている「世界」で、同じ手技をしても全く違う施術体験になると思っています。
単に「整体を受ける」という認識に留まらず、このような世界を共有できると、豊かでしょうね。
あと、この本のあとがきに書かれている「弟子に教えたこと」が個人的には大切なものでした。日常の気にも留めてないような「動き」に注力する。
その視点は感動ものでした(それはぜひ本編で)。
ヨーガ、アーユルベーダ、整体、気功、導引、指圧、操体法、呼吸体操、呼吸瞑想、擦法、手当て、マッサージ、ストレッチング(古くは「柔軟体操」)、野口体操、フェルデンクライス身体訓練法、自彊術、真向法etc.
互いに大いなる異なりを持ちながらも、薬と機械とメスによって人間を捉えていく物質的・分析的・機械論的思想を越えた、ぬくもりふくよかな“身体性”を尊重し、全体的、包括的な“生ける人間の身体”と、生々しい直接的交流を持ち、生ける“身”そのものとして自分を他者をも生きる豊かな思想が、そこにはある。
p4-5